【創作】サンゴが見たい、ししゃもの話

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北海道の先の先にししゃもの大群がいました。

その中に、サンゴが見てみたいという、ししゃもがいました。

「どうせ漁師に捕まるなら、今を楽しみたいんだ。」

そう話しているうちに、隣りのししゃもが網にかかって引き揚げられていきました。

ししゃもは決心しました。遠くてもサンゴを見に、南の島に行ってみよう。

南の海に向かってししゃもは泳ぎ始めました。強い流れが来た時は、流れにまかせて漂いました。

ある日、また強い流れが来たかと思うと、ぐんぐん流されて、真っ暗なくじらのおなかの中にいました。

大勢の海の仲間が周りにいました。

「君は誰? 不思議な形だなぁ」

「ボクはエビさ。君だってボクから見たら不思議な形をしているよ」

「くじらに飲み込まれてしまったね」

「あぁ、ここが最期の場所なのさ」

「そんな事ないよ。逃げればいいのさ」

「どうやって?」

ししゃもはエビに、くじらが海面にあがる時に、大量の水を吹くことを教えました。

「出口のそばで待とう」ししゃもとエビは移動しました。

そして、くじらが上へ浮かび始めました。

ものすごい勢いでししゃもとエビは空中に吹き上げられました。

「おたっしゃで!」エビがさけびました。

ししゃもは、また南の海を目指して泳ぎ始めました。

相当泳いだので、疲れを感じたころ、

「うわぁ」

体がぐんぐん上へ上へと持ち上げられます。

急にまぶしくなったと思ったら、息が苦しくなり・・・。

でも、下にはきらきらと光る海が広がっているのが見えました。

ボクはこんな美しいところに住んでいたのか。ししゃもは自分の住んでいた海を眺めました。

すると、その時、激しく体を揺さぶられたかと思うと、今度は海に向かって真っ逆さまに落ちていきます。空の上の方では、2羽のトンビがけんかをしていました。ししゃもを足でつかんでいたのは、トンビでした。

ししゃもは勢いよく、青い屋根のおうちの庭に落ちました。

庭には猫がいて、ししゃもを目ざとく見つけました。

猫はししゃもをくわえると、青い家の中に入っていきました。

ぴょんとソファの向こうに飛んだ瞬間、犬が吠えました。

わん! 猫はびっくりしてししゃもを口からはなしました。

ししゃもはそばにあった紺色のリュックのふたがあいていたので、中に隠れました。

次の日、女の子がリュックを抱えて車に乗り込みました。

お母さんが言いました。「しゅっぱーつ」

車は空港に向かい・・・リュックの縫い目から外を見たししゃもは飛行機を見て、大きな鳥が何羽もいるのかと思って、小さくちぢこまりました。

女の子とお母さんは飛行機に乗り込みました。

ゴーゴーという音がして、ふわっと飛行機が飛び上がりました。

しばらくししゃもはじっとしているうちに眠っていまいました。

「ママ、海だよ」女の子の声が聞こえたので、ししゃもはせいいっぱい背のびをしました。

今までに見たことがない青のグラデーションが窓から見え始めました。

飛行機が高度を下げて、だんだんと地面が近づいて来ます。

衝撃とともに、飛行機が着陸しました。

ししゃもは何が起きているのか分かりませんでした。

女の子とお母さんは、空港から出ると、レンタカーで海に向かいました。海の駐車場に車を停めると、数人が人たちすでにが待っていました。波止場から船に乗って、女の子とお母さんたちは出発しました。

ししゃもは振り落とされないように、女の子のラッシュガードのすそにしがみついていました。

水中メガネを装着した女の子がお母さんに言いました。

「ママ、サンゴが見えるよ!」

ししゃもはハッとしました。サンゴだって?

ししゃもは海に飛び込みました。

北海道の海よりずっと暖かな海の下に、いろいろな形のサンゴが広がっていました。

サンゴって何種類もあるんだなぁ。ししゃもはここで暮らしたいと思いました。

ししゃもはサンゴを見て嬉しかったけれど、だんだんと眠くなって来ました。

旅の途中で出会ったエビは元気にしているか、ふと気になりました。

(完)

2020.06.14

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