【創作】サンゴが見たい、ししゃもの話
- 2020.06.14
- 創作

北海道の先の先にししゃもの大群がいました。
その中に、サンゴが見てみたいという、ししゃもがいました。
「どうせ漁師に捕まるなら、今を楽しみたいんだ。」
そう話しているうちに、隣りのししゃもが網にかかって引き揚げられていきました。
ししゃもは決心しました。遠くてもサンゴを見に、南の島に行ってみよう。
南の海に向かってししゃもは泳ぎ始めました。強い流れが来た時は、流れにまかせて漂いました。
ある日、また強い流れが来たかと思うと、ぐんぐん流されて、真っ暗なくじらのおなかの中にいました。
大勢の海の仲間が周りにいました。
「君は誰? 不思議な形だなぁ」
「ボクはエビさ。君だってボクから見たら不思議な形をしているよ」
「くじらに飲み込まれてしまったね」
「あぁ、ここが最期の場所なのさ」
「そんな事ないよ。逃げればいいのさ」
「どうやって?」
ししゃもはエビに、くじらが海面にあがる時に、大量の水を吹くことを教えました。
「出口のそばで待とう」ししゃもとエビは移動しました。
そして、くじらが上へ浮かび始めました。
ものすごい勢いでししゃもとエビは空中に吹き上げられました。
「おたっしゃで!」エビがさけびました。
ししゃもは、また南の海を目指して泳ぎ始めました。
相当泳いだので、疲れを感じたころ、
「うわぁ」
体がぐんぐん上へ上へと持ち上げられます。
急にまぶしくなったと思ったら、息が苦しくなり・・・。
でも、下にはきらきらと光る海が広がっているのが見えました。
ボクはこんな美しいところに住んでいたのか。ししゃもは自分の住んでいた海を眺めました。
すると、その時、激しく体を揺さぶられたかと思うと、今度は海に向かって真っ逆さまに落ちていきます。空の上の方では、2羽のトンビがけんかをしていました。ししゃもを足でつかんでいたのは、トンビでした。
ししゃもは勢いよく、青い屋根のおうちの庭に落ちました。
庭には猫がいて、ししゃもを目ざとく見つけました。
猫はししゃもをくわえると、青い家の中に入っていきました。
ぴょんとソファの向こうに飛んだ瞬間、犬が吠えました。
わん! 猫はびっくりしてししゃもを口からはなしました。
ししゃもはそばにあった紺色のリュックのふたがあいていたので、中に隠れました。
次の日、女の子がリュックを抱えて車に乗り込みました。
お母さんが言いました。「しゅっぱーつ」
車は空港に向かい・・・リュックの縫い目から外を見たししゃもは飛行機を見て、大きな鳥が何羽もいるのかと思って、小さくちぢこまりました。
女の子とお母さんは飛行機に乗り込みました。
ゴーゴーという音がして、ふわっと飛行機が飛び上がりました。
しばらくししゃもはじっとしているうちに眠っていまいました。
「ママ、海だよ」女の子の声が聞こえたので、ししゃもはせいいっぱい背のびをしました。
今までに見たことがない青のグラデーションが窓から見え始めました。
飛行機が高度を下げて、だんだんと地面が近づいて来ます。
衝撃とともに、飛行機が着陸しました。
ししゃもは何が起きているのか分かりませんでした。
女の子とお母さんは、空港から出ると、レンタカーで海に向かいました。海の駐車場に車を停めると、数人が人たちすでにが待っていました。波止場から船に乗って、女の子とお母さんたちは出発しました。
ししゃもは振り落とされないように、女の子のラッシュガードのすそにしがみついていました。
水中メガネを装着した女の子がお母さんに言いました。
「ママ、サンゴが見えるよ!」
ししゃもはハッとしました。サンゴだって?
ししゃもは海に飛び込みました。
北海道の海よりずっと暖かな海の下に、いろいろな形のサンゴが広がっていました。
サンゴって何種類もあるんだなぁ。ししゃもはここで暮らしたいと思いました。
ししゃもはサンゴを見て嬉しかったけれど、だんだんと眠くなって来ました。
旅の途中で出会ったエビは元気にしているか、ふと気になりました。
(完)
2020.06.14
-
前の記事
【沖縄県】失敗しないレンタカーでの移動 2020.06.12
-
次の記事
【沖縄県】恩納村・ホテルムーンビーチ 2020.06.17